「高血圧…たくさんあるけど使い分けはどうしている?」
降圧薬の違い、気になったことはありませんか?日本では、多くの方が高血圧の治療を受けており、降圧薬が広く使用されています。これらの薬は作用の違いにより、主に6つの種類に分類されます。
本記事では、施設や在宅医療の現場で得られた薬剤師の知見をもとに、降圧薬の種類や一般的な特徴について整理しました。参考情報としてお読みいただければ幸いです。
【分類と概要】降圧薬とは?どんなタイプがある?
降圧薬とは、一般に「血圧の上昇に関与する身体の仕組みに作用することで、血圧を調整することを目的とした医薬品群」の総称です。
代表的な分類としては以下の6つ
- ACE阻害薬
- ARB
- Ca拮抗薬
- 利尿薬
- α遮断薬
- β遮断薬
本稿では、これらの分類の違いや特徴について、あくまで参考として解説します。
1. ACE阻害薬
体内のアンジオテンシン変換酵素(ACE)を阻害することで、アンジオテンシンⅡの生成を抑える薬剤群です。結果として、男性ホルモンであるアルドステロン分泌が抑えられ、体内のナトリウム貯留が抑制されます。ナトリウム貯留が抑制されると、血圧が下がる仕組みです。
ACEの阻害により、ブラジキニンという物質の分解も妨げられるため、空咳など乾いた咳が現れるケースもあるとされています。
2. ARB(アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬)
アンジオテンシンⅡの受容体(特にAT₁受容体)への結合をブロックする薬剤群です。ACE阻害薬に比べ、空咳の副作用が起こりにくいとされています。
また、血管平滑筋を直接的に緩める作用があるため、むくみの軽減に寄与する可能性もあります。
3. Ca拮抗薬(カルシウム拮抗薬)
Caチャネルを遮断し、血管の平滑筋を弛緩させることで血圧を調整する薬剤群です。比較的強い血管拡張作用があり、糖尿病や脂質異常症を合併する症例でも使用される場合があります。
4. 利尿薬
尿の排出を促進し、体内の水分量を減らすことで間接的に血圧の調整を図る薬剤群です。利尿薬は、ループ系・サイアザイド系・カリウム保持性の3種類に分かれます。
それぞれ、患者の状態や病態に応じて選択されることがあります。
5. α遮断薬
血管に存在するα受容体を遮断することで血管の収縮を抑え、血圧の調整に関与する薬剤です。副次的に血糖や排尿に関わる作用がみられることもあるため、慎重な使用が求められます。
6. β遮断薬
血管に存在するβ受容体(特にβ₁)を遮断することで心拍出量や収縮力を抑制し、血圧に影響を与える薬剤群です。
心疾患を合併する患者に使用されるケースもありますが、喘息などの呼吸器疾患がある場合には注意が必要とされます。
降圧薬を選択する際に注目される3つの視点
以下は、薬剤の選択や調整を行う際に参考とされることの多い視点です。あくまで一般論としてご覧ください。
視点1:食塩感受性の有無
腎機能が低下している場合など、ナトリウム貯留が起きやすいとされ、利尿薬の選択が検討されるケースがあります。
視点2:副作用の許容性
副作用に対する感受性や生活への影響も、薬剤選択の際に重要な要素です。たとえば、咳が強く出る場合はACE阻害薬の見直されることがあります。
視点3:対象となる患者の状態
疾患の背景や血圧の上がり方(収縮・容量依存など)によって、選択される薬剤が変わる場合があります。
降圧薬の強さ比較例
薬剤の切り替えに際しては、用量や作用時間、副作用などを慎重に評価する必要があります。以下はあくまで一例です。
Ca拮抗薬
アムロジピン10mg ≒ ニフェジピンCR 40mg
シルニジピン10mg ≒ アムロジピン8mg
ACE阻害薬
エナラプリル5mg ≒ イミダプリル5mg ≒ ペリンドプリル2mg
ARB
アジルサルタンは持続性が高く、バルサルタンやテルミサルタンも高い効果が報告されています。
降圧薬の違いと、使い分けの基本的な考え方
分類 |
主な作用点 |
特徴・注意点(参考) |
---|---|---|
ACE阻害薬 |
アンジオテンシンⅠ→Ⅱへの変換阻害 |
咳の副作用に注意、心保護作用があるとされる |
ARB |
アンジオテンシンⅡ受容体の遮断 |
咳が少ない、高齢者にも使用しやすい印象 |
Ca拮抗薬 |
Caチャネル遮断・血管拡張 |
強い降圧作用、むくみや頻脈に注意 |
利尿薬 |
ナトリウム排泄による血液量減少 |
電解質異常や腎機能に注意 |
α遮断薬 |
α受容体遮断・血管拡張 |
立ちくらみに注意、合併症にも対応しやすい可能性 |
β遮断薬 |
β1受容体遮断・心拍出量抑制 |
心疾患合併時に有用、喘息には注意 |
降圧薬は降圧薬は単なる“血圧を下げる薬”ではありません。作用機序や対象患者によって多彩に使い分けることが重要です。
「誰に、なぜその薬を使うのか」を意識することで、患者に最適な治療を提案できます。
今後も現場でのリアルな視点を大切にし、ドクターや看護師、ケアマネジャーと連携しながら、患者のQOL向上に貢献していきましょう。